愛を探してた 君の夢を見た
光を求めた 暗がりばかり
生まれて以降 育てられたけれど
目に見える色や 手で触れる形も
耳に残る音楽もなくなり
心の闇夜が広がり 深くなった
黒い鍵の並びが 白い鍵に埋まって
どうしたってペダルは僕には届かないのだろうか
なぜシャープとフラットしか描けないの
私は気づいた 柳の木で あの晩にいた ひとが
長い 髪を
靡かせて 去り 急いで消えた後
私は 知っていた 練習した旋律が 歪んで聞こえた
ピアノの塾の帰り道だったこととか
バスに乗って 思いついた二重和音が 私の休符になっていたこととか
(違いない)
あの髪 何色?
私は 白い 鍵に
光を求めて 愛を探してた
古きを温ねて 理由もないまま
産まれすぐに 音階はつくられ
目に入る色は 近くのものになった
耳にはまり 静かになっていくと
心の叫びが 消え果て 清くなった
白い鍵の群れから 黒い鍵が飛び出し
なぜかこのペダルは僕には踏みしめられないのか
もしシャープとフラットだけで描ききると
私は気づいた あの柳
あの晩に見た 人の
長い 髪が 滑らかに 延び
たちまち消えた後
私は 知っていた旋律の
詩想を 回って追っていた
ピアノの五線譜が黒鍵になったような手で
腹から吸い 海で書かれた休符が 完全和音になったような足で
あの風 (あの息)
あの髪
黒と 白で